今回は個人が支払う損害保険料や、事故や災害が起きた際に受け取る保険金に関する税務処理を中心に、生命保険との相違点や雑損控除、災害減免法について解説していきます。

私たちの日常生活あるいは事業活動の中で起きる様々な事故や災害に備えるためには、金銭的な支えとなる保険プランニングに加えて、関連する税金について理解しておくことが重要となります。

 

 

保険料控除

 

現行制度では、新たに契約した損害保険について、個人が支払う損害保険料の所得から控除することができるのは地震保険のみであり、自動車保険や火災保険、損害保険などの損害保険料は控除の対象とはなりません。

地震保険料控除の対象となるのは自己や自己と生計を一にする配偶者、その他の親族の所有する居住用家屋または生活に通常必要な家財を保険の目的としている契約であり、別荘などは対象とならない点に注意が必要です。

なお、地震保険料の控除額は、所得税では支払保険料の全額(最高5万円)、住民税では支払保険料の半額(最高2万5,000円)となります。

一方、生命保険では個人が支払った生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料は、一定要件のもと、生命保険料控除の対象となり、幅広く控除できる点が損害保険とは大きく異なります。

また、一時払いで支払った生命保険料が控除を受けられるのは1回のみであるに対し、一時払いで支払った地震保険料は契約期間中に1年づつ支払っているものとみなし、毎年控除を受けることができるという違いがあります。

 

受け取る保険金の取り扱い

 

個人が受け取る死亡保険金や満期保険金、解約返戻金などは課税対象となる「これは生命保険も損害保険も基本的に同じですが、「自動車保険の人身傷害補償保険の死亡保険金のうち加害者の過失により受け取る保険金に相当する部分は、損害賠償金としての性質を有するため非課税となるなど、一部異なる部分もあります。

一方で、自己や災害によって被った損失に対する補償として受け取る保険金は非課税です。

例えば、自動車事故によって相手側から受け取った賠償金や、火災事故による損害の補償として受けとった保険金は損失補填として受けとることから所得に該当しないため課税対象となりません。

損害保険は定額の保険金が支払われる生命保険とは異なり、実損払方式が主流であり、実際には被保者が保険金を直接受け取らず、保険会社が修理業社に直接支払うケースもあることから、そもそも課税所得ととなる所得が存在しないという見方もできます。

 

 

雑損控除と災害免除法

 

(1)雑損控除

災害、盗難、横領により、納税者本人、納税者と生計を一にするその年の総所得金額等が38万以下である配偶者やその他の親族が所有する自宅建物、家財(家具、什器、衣服、書籍、暖房装置、冷房装置等の生活に通常必要な資産)、車両等に損害を受けた場合には、所定の金額の所得控除を受けることができます。

災害には、震災、風水害、冷害、雪害、落需等の自然災害のほか、火災等の人為的災害、害虫等生物による異常な災害も含まれます。

また、対象資産には、棚調l資産や事業用固定資産、 1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨とう等は含まれません。控除額は次の算式で計算した金額のうち、いずれか多いほうを適用する事となります。

①差引損失額 ―総所得金額等×10%

②差引損失額のうち災害関連支出の金額 -5万円

損失額が大きいために、その年の所得金額から控除しきれない場合には、原則として、翌年以降最長3年間にわたり繰り越して、各年の所得金額から控除することができます。

 

(2)災害減免法

災害によって住宅や家財に損害を受けた場合、災害減免法により所得税が軽減または免除されます。

災害に遭った年の合計所得金額が1,000万円以下、かつ災害によって住宅や家財に受けた損害金額(保険金などにより補填される金額を除く)が住宅または家財の時価の2分の1以上である場合、その年の合計所得金額に応じて適用されます。

なお、雑損控除と同時に適用することはできず、減免を受けた年の翌年以降に適用を受けることができない点で雑損控除と異なります。

総じて言えば、雑損控除は、納税者本人の所得制限がない、損失発生の原因や対象資産の範囲が広い等の点は理解しておきたいところです。

なお、いずれの制度を適用する場合であっても確定申告は必要になりますのでご注意ください。