今回は、期間縮小によって新たに受給資格を得た人の手続きの仕方、年金の受給資格要件とすでに施行されている年金機能強化法の内容、受給資格期間が足りないする時の対処法などを見ていきます。

老齢基礎年金は、受給資格期間が原則として25年以上あることが要件であり、受給資格期間を幾らかでも欠くとまったく年金を受け取ることができないため、多くの方々が無年金となっていました。

それを解消するために、年金受給に不可欠な受給資格期間を25年間から10年間に縮小する「公的年金制度の財政基盤並びに最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」(以下、年金機能強化法)の改正法が2016年11月に公布され、2017年8月1日から施行されることになりました。

老齢基礎年金の受給資格期の縮小は、2015年10月に予定されていた消費税率引き上げと共に実行ことになっていましたが、税率引き上げが繰り延べになったため、今回の実施となった次第です。

 

対象者には年金請求書を送付

 

受給資格期間が25年間から10年間に短縮されたことによって新たに受給資格を手に入れる人は約64万人とされています。

このうち、すでに65歳以上で、年金を受給するのに必要な期間が10年以上の人には、2017年2月下旬から7月上旬にかけて、「年金請求書」が順次送付されています。

年金請求書を受け取った人は、それに必要事項を記入し、住民票、戸籍謄本などとともに近くの年金事務所や年金相談センターヘ持って行きます。

当人が窓口ヘ行けない時は、委任された代理人が委任状を持って行けば手続きが可能ですし郵送での提出もできます。

請求手続きが遅れても、受給権が発生した時点に遡って年金が支払われますが、受給権の時効は5年間となっています。

すでに65歳以上で保険料納付済期間等が10年以上ある方の場合、最も早くて2017年9月分の老齢年金を10月から受給できるようになります。

 

老齢基礎年金の額は保険料納付済期間等で決まる

 

老齢基礎年金の受給資格要件を確認しておきましょう。

老齢の額は、満額(2017年度は77万9,300円)に「保険料納付済月数等歎480(40年×12月)を乗じた金額となります。

日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は国民年金の被保険者となり、保険料を納付することで老齢基礎年金が受け取れます。

第1号被保険者で国民年金の保険料の納付が困難な人は、免除を受けることができます。

免除には法定免除と申請免除があり、法定免除の対象となるのは、生活保護を受けている人、障害基礎年金または障害厚生年金を受給している人などです。

学生には在学中、保険料の納付が猶予される学生納付特例制度がります。また20歳から50歳未満で本人・配偶者の前年(1月~6月に申請する場合は前々年)の所得が一定額以下であった時は保険料の納付が猶予される納付猶予制度もあります(2025年6月までの時限措置)。いずれも申請して承認されれば、猶予された期間は受給資格期間となりますが年金額には反映されなませんので注意が必要です。

法定免除を受けた期間分の年金額は全額納付した場合の2分の1(2009年3月までは3分の1)になります。従来は、法定免除を受けている期間は本人が希望しても国民年金の保険料を納付することができなかったが、年金機能強化法の施行により、2014年4月から、本人の申し出があれば保険料納付が可能になっています。

申請免除は本人が申請することにより受けられるもので、前年(1月~6月に申請する場合は前々年)の合計所得に応じて、全額免除、4分の3免除(4分の1納付)、半額免除(半額納付)、4分の1免除(4分の3納付)があり、免除を受けた期間分の年金額は全額納付した場合より少なくなります。

保険料の免除・猶予は毎年申請しなければなりませんが、遡って申請することも可能です。従来は申請時点の直前の7月(学生納付特例は4月)まででしたが、年金機能強化法の施行により、2014年4月から、学生納付特例も含めて、保険料の納付期限から2年を経過していない期間、つまり申請時点から2年1カ月前まで遡って申請できるようになりました。

老齢基礎年金の受給資格期間は、保険料納付済期間に保険料免除期間、合算対象期間(以下、カラ期間)、納付猶予期間、学生納付特例期間を合算した期間となります。受給資格期間が短縮されても加入期間が10年に満たないという人は、カラ期間がないかどうか調べてみるとよいでしょう。

 

・会社員や公務員等の被扶養配偶者

1961年4月1日から1986年3月31日まで国民年金に任意加入することができました。任意加入して保険料を納付していれば、その期間は保険料納付済期間として受給資格期間にも 年金額にも反映されます。任意加入していなければ、その期間はカラ期間になり、年金額には反映されないが、受給資格期間には含まれます。1986年4月11日以降、第2号被保険者の被扶養配偶者は第3号被保険者として国民年金に強制加入となったので、第3号被保険者の期間は保険料納付済期間として受給資格期間にも年金額にも反映されます。(ただし、第3号被保険者の届出がされている必要があります。)

 

・学生

1961年4月1日から1991年3月31日まで国民年金に任意加入できました。この間に学生であって任意加入しなかった場合、その期間がカラ期間となります。

 

・海外居住者

海外に居住していた期間のうち、1961年4月1日から1986年3月31日までは国民年金制度の対象外であるためカラ期間となります。1986年4月1日以降は任意加人できたが、任意加入しなかった期間はカラ期間となります。

 

・20歳未満、60歳以上で厚生年金に加入していた人

国民年金の加人期間は原即として20歳から60歳に達するまでだが、18歳で会社員となった場合は、そのときから厚生年金の被保険者かつ第2号被保険者となります。(ただし、18歳から20歳に達するまではカラ期間となる。同様に、60歳以降に厚生年金に加入していた期間もカラ期間となる。)

 

後納や任意加入も活用

 

受給資格期間が25年に満たないのが明らかなためにこれまで保険料を納めてこなかった人も、受給資格期間が短縮されたことによって、これから保険料を払ったり後納したりすることで、受給資格が得られるケースがあるでしょう。

納付を猶予された期間については、10年前まで遡って保険料を納付できます(追納)。

国民年金の毎月の保険料の納付期限は翌月末だが、2年前まで遡って納付することができます(後納)。

さらに、2015年10月から2018年9月までの3年間は、5年前まで遡って納付できる時限措置が設けられています。

20歳以60歳未満の保険料納付済月数が480月未満の人は、60歳から65歳に達するまでの期間、任意加入して、国民年金保険料を納付すると、加人期間や65歳から受け取る老齢基礎年金の額を増やすことができます。

国民年金の未加入期間や保険料の未納期間がある場合は、国民年金に任意加人することも考えられます。

任意加人していて保険料が未納だった期間は従来はカラ期間に含まれなかったが、2014年4月からはカラ期間に算入されることになっています。

老齢基礎年金の受給資格を満たしていない65歳以70歳未満の人も任意加入できます。