「事業承継」という言葉を聞いたことはありますか? 経営者の高齢化が進む日本において、会社を次の世代に引き継ぐ「事業承継」は、非常に重要なテーマとなっています。

この記事では、事業承継とは何か、どのような種類があるのか、そしてどのようなポイントがあるのかを、分かりやすく解説します。


 

事業承継とは?

 

事業承継とは、簡単に言うと、現在の経営者から新しい経営者へ、会社や事業をバトンタッチすることです。
単に社長の肩書きを交代するだけでなく、会社を経営していくために必要なあらゆるものを引き継ぎます。

具体的には、以下の3つの要素が重要になります。

  1. 「人」の承継(経営権): 会社の経営権や役職(代表取締役など)を引き継ぎます。
  2. 「資産」の承継: 会社の株式や事業を行うための設備、不動産、運転資金、借入金といった有形資産を引き継ぎます。
  3. 「知的資産」の承継: 経営理念、従業員の技術やノウハウ、経営者の信用、取引先との人脈、顧客情報、特許などの知的財産権、許認可といった無形資産も引き継ぎます。
    これらは会社の価値を大きく左右する重要な要素です。

 

なぜ事業承継が重要なのか?

 

日本の中小企業では、経営者の高齢化が進む一方で、後継者が見つからずに廃業してしまうケースが増えています。
しかし、廃業は、長年培ってきた技術やノウハウ、雇用が失われるだけでなく、地域経済にも大きな影響を与えます。
事業承継は、こうした事態を防ぎ、会社の存続と発展、そして雇用を守るためにも不可欠なのです。


 

事業承継の種類

 

事業承継には、主に3つの方法があります。

 

1. 親族内承継

 

現在の経営者の子どもや孫、兄弟などの親族に事業を引き継ぐ方法です。

 

メリット

 

  • 社内外の関係者(従業員や取引先など)から心情的に受け入れられやすい傾向があります。
  • 長期間をかけて後継者を育成する時間が確保しやすいです。
  • 株式の贈与や相続など、税制面で優遇される制度(事業承継税制など)を活用できる場合があります。

 

デメリット

 

  • 親族内に必ずしも経営能力のある後継者候補がいるとは限りません。
  • 後継者候補が複数いる場合、後継者の選定や経営権の集中が難しい場合があります。
  • 後継者が別の会社で働いている場合、自社に呼び寄せ、育成するのに時間がかかることがあります。

 

2. 従業員承継(親族外承継)

 

現在の経営者の親族以外の役員や従業員に事業を引き継ぐ方法です。

 

メリット

 

  • 会社のことをよく理解しており、経営者としての資質がある人材を社内から選ぶことができます。
  • 長年働いてきた従業員であれば、経営方針の一貫性を保ちやすく、従業員からの理解も得やすいです。
  • 会社の文化やノウハウが引き継がれやすいです。

 

デメリット

 

  • 後継者となる従業員が、株式の買い取りや納税のための資金を確保するのが難しい場合があります。
  • 個人保証の引き継ぎが困難なケースもあります。
  • 親族や取引先から同意を得るのに時間がかかる場合があります。

 

3. M&A(第三者への引継ぎ)

 

社外の第三者(他社や創業希望者など)に会社を売却し、事業を引き継ぐ方法です。

 

メリット

 

  • 親族や社内に適任者がいない場合でも、広く後継者を探すことができます。
  • 現経営者は会社売却によってまとまった資金を得ることができます。
  • 買い手企業が持つ経営資源(資金、技術、販路など)を活用することで、事業のさらなる成長が期待できます。

 

デメリット

 

  • 希望する価格で売却できるとは限りません。
  • 従業員の労働条件や雇用環境が変化する可能性があります。
  • 買い手との経営理念や企業文化の統合に時間がかかる場合があります。

 

事業承継を進める際の重要なポイント

 

事業承継は、一朝一夕で完了するものではありません。計画的に、そして慎重に進めることが成功の鍵です。

 

1. 早めの準備が成功の鍵

 

事業承継には、後継者の育成、会社の経営状況の把握、税金対策など、多くの準備が必要です。
これらの準備には数年から10年程度の期間を要することもあります。
健康問題などで急に引退を考える前に、早めに準備を始めることが重要です。

 

2. 「見える化」と「磨き上げ」

 

引き継ぐべき「人」「資産」「知的資産」を明確にし、会社の強みや課題を「見える化」することが大切です。
その上で、会社の価値をさらに高めるために、経営改善や業務効率化といった「磨き上げ」を行うことで、後継者にとっても魅力的な事業にできます。

 

3. 税金対策

 

事業承継には、贈与税や相続税、譲渡所得税など、さまざまな税金が発生する可能性があります。特に、自社株式の評価額が高額な場合は、大きな税負担になることも。

 

事業承継税制の活用

 

中小企業の事業承継を支援するため、「事業承継税制」という制度があります。
これは、後継者が非上場株式などを取得した場合に、一定の要件を満たすことで、贈与税や相続税の納税が猶予されたり、場合によっては免除されたりするものです。
この制度を活用することで、後継者の資金負担を大きく軽減できる可能性があります。
適用には条件や期限があるため、専門家への相談が不可欠です。

 

4. 専門家への相談

 

事業承継は、法務、税務、財務など、多岐にわたる専門知識が必要です。
税理士、弁護士、中小企業診断士、M&A仲介会社など、それぞれの分野の専門家と連携し、適切なアドバイスを受けることが成功への近道です。


 

まとめ

 

事業承継は、会社の未来を決める重要な決断です。親族承継、従業員承継、M&Aなど、それぞれの方法にはメリット・デメリットがあり、自社の状況に合った最適な方法を選ぶことが大切です。

早めの準備と計画、そして専門家の力を借りて、あなたの会社を次の世代へ、スムーズに引き継ぎましょう。

ご自身の会社の事業承継について、さらに詳しく知りたい場合は、お気軽にご相談ください。