確定給付企業年金

日本の企業年金は厚生年金基金と適格退職年金を中心に発展してきました。

しかし、運用環境の悪化などでより柔軟な制度設計が可能な年金制度として、確定給付企業年金制度が導入されています。

基金型と規約型の2タイプがあります。

基金型

・企業とは別の法人格を持った企業年金基金を設立し、基金が年金資金を管理運用し年金給付を行います。

・厚生年金基金と異なり代行部分がありません。

・企業年金基金を設立するためには、従業員の同意を得て厚生労働大臣の設立認可を受ける必要があります。

規約型

・労使が合意した年金契約に基づき、企業が主体となって外部の機関で年金資金を管理運用し年金給付を行います。

・厚生年金基金と異なり代行部分がありません。

・制度を開始するためには労使合意された契約について厚生労働大臣から承認を得る必要があります。

■確定給付企業年金について

給付の種類 法定給付=老齢給付金、脱退一時金

任意給付=障害給付金、遺族給付金

受給資格期間 20年を超えてはならない
その他 老齢給付金については規約で定められた年齢(60歳以上65歳以下)に達した後、終身年金または5年以上の年金として受け取り可能となるほか、50歳以上60歳未満で退職した者に対しても支給可能となっています。

厚生年金基金

厚生年金基金は、厚生年金保険の老齢厚生年金の給付の一部を国に代わって行うとともに企業独自の年金給付を上乗せして給付を行っていますが、2024年までに原則廃止されることとなっています。

確定拠出年金

確定拠出年金は,毎月決められた掛金を拠出した上で加入者が自己責任で運用し,将来の受取額が実績によって変動する年金制度です。

企業が企業年金として実施する企業型年金と個人が任意に加入する個人型年金(iDeCo)の2つのタイプがあります。

個人型年金は、加入者個人が掛金を拠出します。

企業型年金では企業が掛金を拠出しますが一定の範囲内で加入者個人による上乗せ拠出ができるようになりました。

加入対象者と拠出限度額

加入対象者 拠出限度額
(月額)
企業型年金 厚生年金基金確定給付企業年金などを実施している企業に勤める国民年金第2号被保険者 27,500円
企業年金制度を実施していない企業に勤める国民年金第2号被保険者 55,000円
個人型年金
(iDeCo)
自営業者などの国民年金第1号被保険者 68,000円
企業年金に加入していない会社員 23,000円
企業年金に加入している会社員で企業型確定拠出年金のみに加入している人 20,000円
企業年金に加入している会社員で企業型確定拠出年金のみに加入している以外の人 12,000円
公務員、私学共済に加入している人 12,000円
専業主婦など  23,000円

確定拠出年金間のポータビリティ

就職、退職、転職などをする場合は加入者ごとの資産残高は、転職先の企業年金か個人型年金に移管されます。

ただし、脱退一時金の受給要件を満たすと脱退一時金を受給して中途退職することが可能です 。

確定拠出年金の運用について

加入者は、年金資産の運用について自ら運営管理機関に対して運用指図を行います。

運営管理機関とは、確定拠出年金制度の運営管理を行う専門機関です。

加入者は、運営管理機関が提示する運営商品の中から運営商品選択します。

確定拠出年金の給付について

確定拠出年金における給付の種類には、老齢給付金のほかに高度障害または死亡した場合に支給される障害給付金、死亡一時金があります。

また、一定の要件を満たした人が中途脱退した時に支給される脱退一時金があります。

老齢給付金

老齢給付金は、60歳以降に受給を開始しますが、遅くとも70歳までに受給を開始しなければなりません。

受給可能となる年齢は、最初の掛金拠出からの経過期間によって異なります。

なお、老齢給付金の支払いは、企業型年金は資産管理機関、個人型年金は国民年金基金連合会の事務委託先である金融機関が行います。

■老齢給付金の受給可能となる年齢

最初の掛金拠出からの経過期間 受給可能となる年齢
10年以上 60歳から
8年以上 61歳から
6年以上 62歳から
4年以上 63歳から
2年以上 64歳から
1月以上 65歳から

障害給付金

加入者又は加入者であった人が、70歳到達以前に政令に定める程度の障害の状態に該当した場合に請求することができます。

死亡一時金

加入者が死亡した場合に請求できる給付金です。

脱退一時金

①または②の要件を満たす人は脱退一時金を請求することができます。

① 以下の5つすべてに該当する人

1,国民年金保険の保険料免除者

2,確定拠出年金の障害給付金の受給権者でない

3,通算拠出期間が1か月以上3年以下または資産額が25万円以下

4,企業型年金加入者または個人型年金加入者の資格を喪失してから2年を経過していない

5,企業型年金の資格喪失時に脱退一時金を受給していない

② 以下の3つすべてに該当する人

1,企業型年金の加入者運用指図者または個人型年金の加入者運用指図者でない

2,個人別管理資産額が15,000円以下

3,企業型年金加入者の資格を喪失した日の属する月の翌月から起算して6か月を経過していない 

従業員拠出(マッチング拠出)

企業型確定拠出年金の規約に従業員拠出を定める場合、加入者掛金の額は、事業主掛金の額を超えない範囲とされています。

また、事業主掛金及び加入者掛金の合計額は、拠出限度額を超えない範囲とされています。

加入者掛金の額は、原則として年に1回に限り変更可能であり、支払った全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります。

税法上の取り扱い

掛金 事業主拠出 全額損金算入
加入者拠出 小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となる
給付時 老齢給付 一時金受取=退職所得

年金受取=雑所得

障害給付 非課税
死亡一時金 相続税法上のみなし相続財産
脱退一時金 一時所得