雇用保険は、労働者が失業した時にさまざまな給付を行ったり、求職活動を支援する制度です。
また、労働者の失業予防や雇用機会の増大、能力の開発・向上を図る制度でもあります。
この記事の内容
雇用保険の加入条件
雇用保険の被保険者となる要件は、1週間の所定労働時間が20時間以上あり、同一の事業主に継続して31日以上雇用される見込みがあることです。
雇用保険の保険料
雇用保険の保険料は、失業など給付に充てられる分と雇用保険二事業に充てられる分があります。
このうち労働者が負担する保険料は、失業等給付に充てられます。
また、賃金総額に✕保険料率で計算しますが、保険料率は事業の種類により3段階に分かれています。
一般求職者給付
65歳未満で離職した人に支給される一般求職者給付には、基本手当、技能習得手当、寄宿手当、傷病手当があります。
基本手当
基本手当は、被保険者が失業した時に、求職活動中の生活費を補填する目的で支給されます。
受給要件
・離職し雇用保険の被保険者でなくなっていること
・働く意志と能力があるにもかかわらず、就職することができない状態であること
・離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12カ月以上あること
※ただし、特定受給資格者や特定理由離職者の場合は、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6カ月以上あること
特定受給資格者
特定受給資格者とは、倒産や解雇などにより再就職の準備をする時間的余裕がないまま離職した人のこと
特定理由離職者
特定理由離職者とは、期間の定めのある労働者で契約が更新されなかったために離職した人のこと
受給手続きの流れ
1,退職した事業所から離職票を受け取ります
2,本人の住所地を管轄する公共職業安定所で求職の申込みをします
3,公共職業安定所から受給資格証が交付され失業の認定日が指定されます(認定日は4週間に1回あります)
4,失業の認定日に公共職業安定所に行き、失業の認定を受けます
5、4週間に1回、失業の認定を受けた日数分の基本手当が金融機関の口座に振り込みされます
受給期間
受給期間は、原則として離職した日の翌日から1年間です。
この期間を過ぎた場合は所定給付日数が残っていても原則支給されません。
給付制限
・7日間の待期期間は支給されません
・自己都合の退職や本人の重大な責による解雇などの場合には、待期の7日間に加え、1~3ヶ月は支給されません
基本手当日額
基本手当日額 = 賃金日額 ✕ 給付率 |
賃金日額
賃金日額は、被保険者期間として計算された最後の6カ間に支払われた賃金総額を180日で除した金額
給付率
賃金日額や離職日の年齢によって異なります
・60歳未満は50~80%
・60~65歳未満は45~80%
基本手当の所定給付日数
所定給付日数とは、基本手当の支給を受けられる日数で、年齢・離職理由・被保険者期間に応じて異なります。
一般の離職者
年齢/被保険者期間 | 10年未満 | 10年以上
20年未満 |
20年以上 |
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
就職困難者(障害者等)
年齢/被保険者期間 | 1年未満 | 1年以上 |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 360日 |
特定受給資格者(2020年3月31日までに離職した特定理由離職者も含む)
年齢/被保険者期間 | 1年未満 | 1年以上
5年未満 |
5年以上
10年未満 |
10年以上
20年未満 |
20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
高齢求職者給付金
高年齢求職者給付金とは、65歳以上の高年齢被保険者が離職した場合に一時金で支給されるものです。
支給要件
・働く意志と能力があるのにもかかわらず、就職できずにいること
・離職の日以前1年間に被保険者期間が6カ月以上あること
支給額
高年齢求職者給付金=基本手当日額✕給付日数
被保険者期間 | 1年未満 | 1年以上 |
給付日数 | 30日 | 50日 |
※基本手当日額の計算は、一般の受給資格者と同じです。
就業手当
就業手当は、所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上残して臨時的な就職をした場合、基本手当日額の30%が、賃金に上乗せして支給されます。
再就職手当
再就職手当は、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある人が、安定した職業に就職した場合などに支給されます。
再就職手当の支給額
①支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の場合
再就職手当=支給残日数✕70%✕基本手当日額 |
②支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の場合
再就職手当=支給残日数✕60%✕基本手当日額 |
教育訓練給付
教育訓練給付には、一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金、教育訓練支援給付金の3種類があり、厚生労働大臣指定の教育訓練を受講し修了した場合に支給されます。
教育訓練修了日の翌日から起算して1ヶ月以内に住所を管轄するハローワークに支給申請を行う必要があります。
一般教育訓練給付金
被保険者期間 (同一の事業主に雇用された期間) |
支給内容 |
3年以上
※初回に限り1年以上 |
支払った費用の20%相当額
※4,000円以上で上限10万円 |
専門実践教育訓練給付金
被保険者期間 (同一の事業主に雇用された期間) |
支給内容 |
3年以上
※初回に限り2年以上 |
①支払った費用の50%相当額
※4,000円以上で上限40万円 (訓練期間が最大3年間なので最大120万円が上限となります) ②訓練終了後に資格を取得して受講修了日の翌日から1年以内に就職した場合は、支払った費用の20%相当額が追加支給されます。 ※ただし、訓練期間が1年の場合56万円、2年の場合112万円、3年の場合168万円が上限) |
教育訓練支援給付金
支給対象 | 支給内容 |
専門実践教育訓練を初めて受講する時に45歳未満の人 | 訓練受講中で基本手当が受けられない期間に基本手当日額の80%が支給されます。 |
雇用継続給付
雇用継続給付は、高年齢者や育児休業取得者が、生活を円滑に継続できるよう支援することを目的とした給付です。
高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付の3種類があります。
高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付は、基本手当を受給しないで働き続ける者に対して給付します。
高年齢雇用継続給付金と高年齢再就職給付金の2種類があります。
受給要件
・雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あること
・60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者であること
・賃金額が60歳到達時の賃金額の75%未満であること
高年齢雇用継続基本給付金
雇用保険の被保険者であり、60歳になった後も継続して雇用されている人に支給されます。
支給額は、現在支払われている賃金の15%です。
ただし、賃金が60歳時点の賃金額の61%以上75%未満の場合には給付率が逓減します。
高年齢再就職給付金
60歳に達した後に基本手当を受給した後に基本手当の支給残日数が100日以上で再就職して雇用保険の被保険者になった人に支給されます。
支給期間は、基本手当の支給残日数が200日以上の場合2年間、100日以上200日未満の場合は1年間です。
育児休業給付
育児休業給付は、育児休業をした被保険者に支給されるものです。
支給要件
・雇用保険の一般被保険者および高年齢被保険者であること
・1歳未満の子を養育するために育児休業をしていること
・育児休業開始前2年間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が通算12カ月以上あること
支給額
育児休業を開始してから180日間は、休業開始時の賃金日額の67%です。
181日目からは、休業開始時の賃金日額の50%が給付されます。
介護休業給付
介護休業給付は、介護休業をした労働者に給付金を支給する制度です。
対象家族
被保険者の配偶者、父母(養父母)、子(養子)、配偶者の父母(養父母)、祖父母、兄弟姉妹、孫
支給要件
・雇用保険の一般非保険者または高年齢被保険者であること
・対象家族を介護するために休業を開始した日前2年間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が通算12カ月以上あること
支給額
支給額は、休業開始時賃金日額の67%相当額です。
支給期間
支給期間は、支給対象となる同一家族について93日を限度に3回までとなっています。