成年後見制度は、高齢化社会への対応および知的障害者や精神障害者などの福祉の充実を目的としています。

成年後見人には、精神障害者などを代理して契約等の法律行為をしたり、本人がした不利益な行為をあとから取り消す権限が与えられています。

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があります。

 

法定後見制度とは

判断能力が不十分な人に対して家庭裁判所が成年後見人・保佐人・補助人を選任する制度です。

法定後見制度には、後見・保佐・補助の制度があります。

後見について

精神上の障害により、判断能力を欠く状況の人※1を保護する制度で、家庭裁判所が後見人を選任します。

後見人には代理権と取消権が与えられ財産に関するすべての法律行為について代理し、本人が自ら行った法律行為を取り消すことができます。

ただし、日用品の購入その他の日常生活に関する行為については取消権の対象から除外し本人の判断に委ねています。

※1判断能力を欠く状況の人=日常的に必要な買い物も1人ではできない程度の人

保佐について

精神上の障害により、判断能力が著しく不十分な人※2を保護する制度で、家庭裁判所が保佐人を選任します。

保佐人には、 民法で定められた特定の法律行為について、同意権・取消権が与えられます。

また、 本人の申立てまたは同意があれば、家庭裁判所の審判により、特定の法律行為の同意権・取消権や代理権を追加することもできます。

※2判断能力が著しく不十分な人=日常的に必要な買い物程度は1人でできるが、自己の財産を管理処分するには常に援助が必要な人

補助について

軽度の精神上の障害により、判断能力が不十分である人※3を保護する制度で、家庭裁判所が補助人を選任します。

補助人は、特定の法律行為について代理権または同意権・取消権が与えられます。

補助人の同意を得ずに同意権の対象となる特定の法律行為を行った場合には、その行為を取り消すことができます。

また、各審判においては本人の申立てまたは同意が要件となっています。

※3判断能力が不十分である人=自己の財産を管理処分するには援助が必要な場合がある人

申し立てをすることができる人

後見・保佐・補助の審判の申し立ては、本人・配偶者・四親等内の親族・検察官等が行うことができます。また、市町村長にも認められています。

後見 保佐 補助
対象者 精神上の障害により判断能力を欠く状況にある人※1 精神上の障害により判断能力が著しく不十分な人※2 軽度の精神上の障害により判断能力が不十分な人※3
与えられる権限 取消権・代理権 同意権・取消権・代理権
開始の手続き

申し立てをすることができる人 本人・配偶者・四親等内の親族・市町村長など
本人の同意 不要 必要
同意権 成年後見人等の同意が必要な行為 民法13条1項所定の行為※
家庭裁判所の審判により、範囲を広げることができる。
申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」
民法13条1項所定の行為※の一部
取消権 取消しが可能な行為 日用品の購入その他日常生活に関する行為以外
代理権

与えられる代理権の範囲 財産に関するすべての法律行為 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」
本人の同意 不要 必要

※民法13条1項所定の行為とは、不動産売買・借金・訴訟行為・相続の承認、放棄等の行為があげられますが、日用品の購入など「日常生活に関する行為」は除かれます。

 

任意後見制度とは

任意後見制度とは、将来判断能力が衰えた場合に備え、任意後見契約によって後見人を選任しておく制度です。

任意後見契約について

  • 任意後見受任者との間で任意後見契約を結びます。
  • 判断能力が低下したら家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立をします。
  • 任意後見監督人が選任されると、任意後見契約の効力が発生し、任意後見受任者が任意後見人となります。
  • 任意後見契約は、定められている様式の公正証書によってしなければなりません。

 

成年後見登記制度とは

法定後見制度における後見人等の権限の範囲や、任意後見契約の内容は東京法務局に登記されます。

法定後見制度の登記

法定後見制度の登記は、後見・保佐・補助の審判が行われた場合に行われます。

登記には、後見・保佐・補助の種類や同意権・代理権の範囲などが記載されます。

任意後見制度の登記

任意後見契約の公正証書を作成した場合に契約内容が登記されます。

また、任意後見監督人の選任の審判が行われた場合にも審判内容の登記が行われます。