この記事の内容
老齢基礎年金
受給要件
老齢基礎年金は、保険料納付済期間と免除期間、合算対象期間をあわせて10年以上ある人が65歳に達した時に、受給することができます。
保険料納付済期間
保険料納付済期間とは、第1号被保険者や第2号被保険者の期間で保険料を納めた期間です。
また、第3号被保険者期間は保険料は納めていませんが保険料納付済期間として扱われます。
保険料免除期間
保険料免除期間とは、第1号被保険者期間のうち、保険料の納付を免除された期間のことをいいます。
法定免除、申請免除、学生納付特例制度などがあります。
合算対象期間
合算対象期間とは、受給資格期間にはカウントされますが、年金額には反映されない期間のことです。
年金額に反映されないため「カラ期間」ともいわれています。
年金額
2020年度の満額年金額は781,700円です。
老齢基礎年金の計算式は次のとおりです。
老齢基礎年金=781,700円✕保険料納付済月数/加入年数(最高40年)✕12月 |
保険料免除期間がある場合
保険料免除期間がある場合の保険料納付済月数への反映割合は次のとおりです。
全額免除 | 3/4免除 | 半額免除 | 1/4免除 | |
平成21年3月までの期間 | 3分の1 | 2分の1 | 3分の2 | 6分の5 |
平成21年4月以降の期間 | 2分の1 | 8分の5 | 4分の3 | 8分の7 |
付加年金の計算
国民年金の第1号被保険者が月額400円の付加保険料を納めると老齢基礎年金に付加年金が終身で加算されます。
また、老齢基礎年金を繰り下げまたは繰り上げて受給する場合、付加年金も同様の減額率または増加率で計算された額が支給されます。
上乗せできる付加年金の計算式は次のとおりです。
付加年金=200円✕付加保険料納付月数 |
繰り上げ受給と繰り下げ受給
老齢基礎年金は、65歳から支給されますが本人の希望により繰り上げ受給または繰り下げ受給を行うことができます。
繰り上げ受給
繰り上げ受給とは、本来65歳から受給できる年金を60歳から64歳までのうちに受取を開始することです。
繰り上げ受給は、「0.5%✕繰り上げた月数」分減額された年金が一生支給されます。
・繰り上げ請求後の取消しや変更はできません。
・繰り上げ請求後は、障害基礎年金や寡婦年金の請求はできません。
・繰り上げ請求後は、65歳になるまで遺族厚生年金をを併給できません。
繰り下げ受給
繰り下げ受給とは、老齢基礎年金の受給資格を満たしている人が66歳以後に請求をすれば、繰り下げした期間に応じて増額された年金が支給されることです。
繰り下げ受給は、「0.7%✕繰り下げた月数」分増額された年金が一生支給されます。
・繰り下げは受給は70歳までです。
・付加年金を受給できる場合、付加年金も繰り下げ受給となり、同率で増額されます。
・振替加算の増額はありません。
老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金
次の要件を満たした人には、60歳から64歳まで特別支給の老齢厚生年金が支給されます。
・男性は1961(昭和36)年4月1日以前、女性は1966(昭和41)年4月1日以前生まれであること
・老齢基礎年金の受給資格を満たしていること
・厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あること
特別支給の老齢厚生年金の年金額
特別支給の老齢厚生年金は、報酬比例部分と定額部分に分けられます。
さらに、要件を満たせば加給年金額が加算されます。
報酬比例部分(本来水準)
報酬比例部分は本来水準と従前額保障(例外的な扱い)の計算方法があります。
本来水準の計算式は次のとおりです。
報酬比例部分=①+②
① 平成15年3月までの期間=平均標準報酬月額✕乗率/1,000✕被保険者期間の月数 ② 平成15年4月以降の期間=平均標準報酬月額✕乗率/1,000✕被保険者期間の月数 |
定額部分
定額部分=1,628円✕改定率✕生年月日に応じた乗率✕被保険者期間の月数 |
被保険者期間の月数には、生年月日に応じた上限が設けられており、昭和21年4月2日以降生まれの人の場合、480月が上限となります。
障害者・長期加入者の特例
特別支給の老齢厚生年金の定額分が支給されない昭和16年4月2日以降生まれの人であっても、障害者・長期加入者の特例に該当すれば、報酬比例部分・定額部分+加給年金が支給されます。
障害者の特例
・厚生年金の被保険者でないこと
・障害等級が3級以上の障害であること
長期加入者の特例
・厚生年金の被保険者でないこと
・厚生年金保険の被保険者期間が44年以上あること
老齢厚生年金(65歳以降)
老齢厚生年金は、次の要件を満たしている人に支給されます。
・65歳以上であること
・老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていること
・厚生年金保険の被保険者期間が1カ月以上あること
老齢厚生年金(65歳以降)の年金額
65歳以降の老齢厚生年金は報酬比例部分と経過的加算に分けられます。
さらに、要件を満たせば加給年金額が加算されます。
報酬比例部分
報酬比例部分の計算は特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分の計算と同じです。
経過的加算
定額部分と老齢基礎年金の差額が経過的加算として支給されます。
老齢厚生年金の繰り上げ・繰り下げ制度
老齢厚生年金の繰り上げは、老齢基礎年金と同時に行わなければなりません。
減額率は「0.5%✕繰り上げた月数」分となります。
老齢厚生年金の繰り下げは、老齢基礎年金と同時かどちらか一方を繰り下げることも可能となっています。
増加率は「0.7%✕繰り下げた月数」分となります。
加給年金と振替加算
老齢厚生年金には、家族手当みたいな意味合いを持つ加給年金があります。
また、加給年金を受給している配偶者が65歳になって自身の老齢基礎年金が受給できるようになると加給年金は支給停止になりますが、代わりに配偶者の老齢基礎年金に振替加算が支給されます。
加給年金
受給権者の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある場合で、受給権を取得したとき、受給権者と加給年金の対象者とのあいだに生計維持関係があるときに加算されます。
対象となる配偶者
・65歳到達時点または定額部分支給開始年齢に到達した時点における配偶者でなければならない。
・事実婚関係にある場合も含みます。
・被保険者期間20年以上の老齢厚生年金、障害基礎年金、障害厚生年金のいずれかを受けられる場合は支給停止されます。
・配偶者の年収が850万以上あると加算されません。
対象となる子
・18歳になった日以降、最初の3月31日までの子
・障害等級1級または2級の状態にある場合は20歳未満の子
加給年金額(2020年度)
配偶者 | 224,900円 |
1人目、2人目の子 | 224,900円 |
3人目以降の子 | 75,000円 |
加給年金の特別加算額
受給権者が昭和9年4月2日以降生まれの場合、配偶者の加給年金に特別加算額が加算されます。
振替加算
配偶者の加給年金は、配偶者が65歳になった時に停止されます。
しかし、要件を満たした場合一定額が配偶者の老齢基礎年金に振替加算されます。
・昭和41年4月1日以前に生まれた人であること。
・配偶者が厚生年金保険に20年以上加入していないこと。
・配偶者の年収が850万以上ないこと。
在職老齢年金
在職老齢年金とは、60歳以降も厚生年金保険の被保険者として働きながら受け取る老齢厚生年金のことです。
受け取る年齢と報酬額によって支給停止となる金額が変わってきます。
60歳台前半の在職老齢年金
報酬比例部分と定額部分が支給停止の対象となります。
基本月額と総報酬月額相当額のによって次の計算式で求めた金額が支給停止されます。
基本月額=特別支給の老齢厚生年金の金額(加給年金は除く)÷12 |
総報酬月額相当額=その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の総額÷12 |
■60歳台前半の在職老齢年金の支給停止額
基本月額 | 総報酬月額相当額 | 計算式 |
28万円以下 | 47万円以下 | (基本月額+総報酬月額相当額ー28万円)✕1/2 |
47万円超 | (47万円+基本月額ー28万円)✕1/2+
(総報酬月額相当額ー47万円) |
|
28万円以上 | 47万円以下 | 総報酬月額相当額✕1/2 |
47万円超 | 47万円✕1/2+(総報酬月額相当額ー47万円) |
60歳台後半の在職老齢年金
基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円を超える場合に、47万円を超える額の2分の1が支給停止されます。
尚、支給停止額は毎年見直されます。
■60歳台後半の在職老齢年金の支給停止額
総報酬月額相当額+基本月額 | 支給停止額 |
47万円以下 | 支給停止されません |
47万円超 | 47万円を超える額の2分の1が支給停止されます |
70歳以上の在職老齢年金
70歳以上の在職老齢年金は、60歳台後半の在職老齢年金の仕組みと同じ様に老齢厚生年金の全部または一部を支給停止します。